大会社の株価中央値が約7割上昇する試算も ― 第6回有識者会議と事業承継税制「2027年12月31日」の関係 | 大阪・名古屋・東京の事業承継専門家|株式会社NEX Consulting(ネックスコンサルティング)

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税制解説資産承継事業承継

大会社の株価中央値が約7割上昇する試算も ― 第6回有識者会議と事業承継税制「2027年12月31日」の関係

2026年9月16日の第6回有識者会議で、国税庁は自社株評価を「残余利益方式」へ一本化する案の具体的な計算方法と試算結果を示しました。一方で「事業承継税制を使えば株価が上がっても関係ない」「改正が固まってから考えればよい」と受け止めている経営者も少なくありません。結論から言えば、事業承継税制の特例措置は2027年12月31日までの贈与・相続にしか使えず、評価見直しの適用時期はまだ示されていません。ルールが確定する前に判断を迫られるのが、今回の最大の論点です。

目次

第6回有識者会議では何が示されたのか

国税庁は、これまで会社規模ごとに使い分けてきた類似業種比準方式・純資産価額方式などを、残余利益方式に一本化する案を示しています。残余利益方式とは、直前期末の簿価純資産に、過去5年間の平均利益から「資本コスト(還元率8%)」を差し引いた超過利益の5年分を加え、最後に一定の割合(しんしゃく率)を掛けて評価する方法です。資料の計算例では、簿価純資産1億円・年平均利益1,000万円・年平均配当200万円の会社の評価額は約8,261万円とされています。

実際の申告データ1,378社を用いた試算では、しんしゃく率を0.8とした場合、全体の中央値は現行比2.3%増とほぼ横ばいです。しかし会社規模別に見ると、影響は大きく異なります。

会社規模現行申告評価額比の増減(中央値)現行以下となる会社の割合
大会社+71.7%24.2%
中会社+12.1%42.2%
小会社▲21.8%67.9%
全体+2.3%48.6%

※加算期間5年・還元率8%・しんしゃく率0.8の場合。しんしゃく率は未定で、0.7〜1.0の幅で試算されています。

これまで類似業種比準方式の恩恵が大きかった大会社ほど、株価が大きく上がる構造です。なお、会議資料には適用開始時期は示されておらず、議論は第7回以降も続きます。

事業承継税制を使えば、評価見直しは関係ないのか

事業承継税制(自社株の贈与税・相続税の納税を猶予し、要件を満たせば免除する制度)を使う場合、ポイントは「いつの評価額で課税されるか」です。贈与税の納税猶予を受けた株式は、先代経営者が亡くなった時に相続したものとみなされますが、その価額は贈与時の価額で計算します。つまり、現行ルールの下で贈与を済ませれば、その評価額が相続時まで引き継がれます。

ところが、全株式・税額の100%が猶予対象となる特例措置は、2027年12月31日までの贈与・相続に限られます。令和8年度改正で延長されたのは特例承継計画の提出期限(2027年9月30日)だけで、実行期限は延びていません。

項目特例措置(〜2027年12月31日)一般措置(期限後)
対象株式数全株式発行済議決権株式の3分の2まで
相続税の猶予割合100%80%
事前の計画提出必要(2027年9月30日まで)不要

期限後に相続が起き、仮に大会社の株価が7割上がっていれば、一般措置では猶予されない3分の1の株式と2割の税額に、上昇後の評価額がそのまま効いてきます。また、猶予が取り消されれば、贈与時の評価額による税額に利子税を加えて納める必要があります。贈与の実行には株価算定や都道府県への認定申請の準備期間も要するため、期限ぎりぎりの着手では間に合わないおそれがあります。

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「改正が固まってから動けばよい」という考え方をどう見るか

反対の考え方にも合理性があります。日本商工会議所は第6回会議に意見書を提出し、大幅な見直しは円滑な事業承継を阻害すると強く懸念を示しました。経済産業省・中小企業庁も、業種や経営状況に応じた広範な試算・検証を求めたうえで、事業承継税制は中堅企業が対象外で、中小企業でも長期の管理コストから「活用できる者は限られている」と指摘しています。しんしゃく率も未定で、小会社ではむしろ株価が下がる会社が多数派です。

それでも私たちは、後継者が確定し、贈与後5年間の代表者継続などの要件を満たせる見込みがある大会社・中会社は、今の時点で両方式の試算を行うべきと考えます。特例措置の期限は法律で決まっており、評価見直しの結論を待っていては、贈与・相続の実行が間に合わない可能性があるためです。反対に、後継者が未確定の場合や小会社で株価が下がる見込みの場合は、評価額を固定する目的だけで制度を急ぐべきではありません。

まとめ

  • 第6回会議の試算では、しんしゃく率0.8で大会社の株価中央値が約7割上昇、小会社は約2割低下。
  • 事業承継税制で贈与した株式は、相続時も贈与時の評価額で課税される。
  • 特例措置の実行期限は2027年12月31日のまま。計画提出は2027年9月30日まで。
  • 後継者が確定している大会社・中会社は、現行方式と残余利益方式の両方で株価を試算し、贈与の時期を判断すべき。

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本稿は、第6回「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の公表資料と事業承継税制に関する一般的な解説であり、個別の案件における判断・結果を保証するものではありません。見直し案は検討段階であり、今後変更される可能性があります。実際の案件では、個別の事情を踏まえ、専門家への確認を行ってください。


参考・出典

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