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債務超過でも事業承継はできます。ただしリスケを繰り返した89%は、、

「債務超過の会社は承継できない」。この前提は、実務上は正確ではありません。正しくは「債務超過のまま承継しようとすると、後継者が個人保証を理由に断る」です。論点は純資産がマイナスであること自体ではなく、保証債務の整理を設計しないまま時間だけが過ぎていくことにあります。

目次

なぜ「業績が戻ってから承継する」という発想は成立しないのですか

日本企業の後継者不在率は50.1%まで低下し、7年連続で改善しています。ただしこれは、後継者を確保できた企業を含めた全体の数字です。債務超過企業では事情が異なります。中小企業庁の調査では、後継者候補がいるにもかかわらず承継を拒否された企業のうち、59.8%が個人保証を理由に挙げています。会社の借入を個人で背負う覚悟を、息子や役員に求めている構図です。

ここで多くの経営者が選ぶのが「業績が回復してから承継する」という判断です。しかしこの判断の成功率は、すでに数字で否定されています。中小企業庁が2026年3月に公表した報告書によれば、2019年度から2024年度にかけて支援メニューを複数回利用し、リスケジュール(返済条件の変更。元本返済の一時猶予などを指します)を繰り返した事業者のうち、89%は最終的な事業再生に至っていません。返済猶予は時間を買う手段であって、債務を減らす手段ではないからです。買った時間に何をするかを決めていなければ、増えるのは経営者の年齢だけで、借入残高は減りません。

先送りした場合、経営者個人は具体的に何を失うのですか

失うのは会社だけではありません。保証債務の整理条件そのものが悪化します。

「経営者保証に関するガイドライン」に基づく私的整理では、破産手続における自由財産(現金99万円など)に加えて、インセンティブ資産を手元に残せる可能性があります。具体的には、民事執行法施行令が定める標準的な世帯の必要生計費である月33万円に、雇用保険の給付期間(90日〜330日)を乗じた額、そして華美でない自宅等です。年齢によっては、自由財産に加えて300万円を超える生活資金と住み慣れた自宅を残せる余地があります。破産手続では、自宅は原則として換価の対象です。

ただし、これは無条件ではありません。ガイドラインが残存資産の上積みを認めるのは、破産した場合の配当見込額よりも債権者の回収見込額が増える場合、つまり経済合理性が認められる場合に限られます。事業価値が毀損し切ってからでは、この差額が生まれません。したがって、債務超過の会社で承継を検討する場合は、業績の底が見えた時点で保証債務の整理方針を金融機関と協議すべきです。着手が遅れるほど、経営者の手元に残せる資産は確実に減ります。

債務超過の会社には、どの出口が残っているのですか

選択肢は4つです。重要なのは、この4つが「優劣」ではなく「前提条件の違い」で決まる点です。

出口 成立の前提 後継者の個人保証 想定期間 向くケース
自力再建後に親族・社員へ承継 営業利益が黒字で、実質債務超過を概ね5年以内に解消できる 解除交渉の余地あり 5〜10年 本業が傷んでおらず、後継者が確定している
私的整理+第二会社方式でスポンサーへ承継 採算部門が明確に切り分けられる 新会社では原則不要 1〜2年 事業は残せるが、債務が事業規模に対して過大
再生ファンドが一時的に株主・経営に入る 本業に相応の収益力があり、再生計画に金融機関の合意が得られる ファンド保有期間中は不要 3〜7年 後継者候補はいるが、いま債務ごと引き継がせられない
廃業・清算(保証債務整理を併用) 事業の収益力が回復しない 1〜2年 早期に判断し、経営者の生活再建を優先する

実務で最も見落とされやすいのは3番目です。再生ファンドは、金融機関からの債権買取や増資によって一時的に株主となり、債務の整理と収益構造の立て直しを担ったうえで、数年後に経営陣や第三者へ株式を引き継ぎます。承継とファンドは対立しません。ファンドが「債務の切り離し」を引き受け、その後に後継者が「保証のない会社」を引き継ぐ。つまり順序の問題です。

自社がこの4つのどこに位置するのかは、実態貸借対照表を作らなければ判断できません。30分の無料相談で、実質債務超過額と保証債務額を並べたうえで、取り得る出口を整理いたします。

「ファンドを入れると会社を乗っ取られる」という指摘は正しいのですか

実務家の一部には、中小企業がファンドを受け入れることに慎重な見方があります。議決権を握られ、人員整理や資産売却を求められ、最終的に第三者へ転売される、という懸念です。この懸念自体は否定できません。ファンドは投資回収を前提とする以上、期限のある株主だからです。

それでも私たちがファンド活用を選択肢に入れるべきだと考えるのは、比較対象が「何もしない」だからです。しかも、政策的な受け皿は整備されています。中小機構は、過剰債務等により業況が悪化しているものの本業には相応の収益力がある中小企業を支援する「中小企業再生ファンド」に有限責任組合員として出資しており、2023年9月末時点で11ファンド・322.4億円の契約実績があります。2025年3月に設立されたファンドでは、総額136億円のうち40億円を中小機構が出資し、地域金融機関が参加しています。こうしたファンドは中小企業活性化協議会の再生計画とセットで機能する枠組みであり、短期転売のみを目的とする資本とは性格が異なります。社内に後継者候補がいる会社ほど、この形は検討に値します。

まとめ

  • 債務超過そのものは承継の障害ではありません。障害は、整理されないまま残る個人保証です。
  • リスケの反復に出口はありません。複数回利用した事業者の89%が再生に至っていません。
  • 保証債務の整理は、事業価値が残っているうちに着手した場合にのみ条件が良くなります。
  • 次に取るべき行動は、直近3期の実態貸借対照表を作り、実質債務超過額・保証債務額・後継者の意思の3点を同時に確認することです。

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本稿は、債務超過企業の事業承継および再生ファンドの活用に関する一般的な解説であり、個別の案件における判断・結果を保証するものではありません。実際の案件では、個別の事情を踏まえ、専門家への確認を行ってください。


参考・出典

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