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事業承継の相談先、59%が「顧問税理士」に集中——最初に相談した相手が"出口"を決めてしまう理由

結論から言います。事業承継の相談先は「誰が一番詳しいか」ではなく「その相手が何で収益を得ているか」で選ぶべきです。相談先の報酬構造は、必ず助言の方向に影響します。銀行・M&A仲介・税理士・コンサルの四者には、それぞれ明確な強みと、同じくらい明確な限界があります。

後継者問題を誰に相談するか。多くの経営者は「いつも会っている人」に話します。しかし相談相手が持つ収益構造は、助言の方向を静かに規定します。相談先を選ぶことは、実は承継の出口を選ぶことに近いのです。本稿では、私たち自身を含む四者の限界を正直に並べます。

目次

なぜ「いつもの相談相手」に話すと出口が固定されるのか

事業承継の相談相手として最も多いのは顧問の公認会計士・税理士で59.1%、次いで親族・友人が43.4%、取引金融機関が42.3%です。事業引継ぎ支援センターなど中立的な公的窓口はごくわずかにとどまります。

一方で、全国約27万社のうち後継者が「いない」または「未定」の企業は13.8万社、後継者不在率は50.1%です。後継者候補の属性では「非同族」が41.0%と初めて4割を超え、親族以外への承継が主流になりつつあります。

この二つの数字を重ねると問題が見えます。承継の選択肢は親族・社員・M&Aと広がっているのに、最初の相談窓口は「税務に強い人」と「融資をする人」に偏っているのです。病院で外科を訪ねれば手術の話になり、内科を訪ねれば薬の話になるのと同じで、相談先の得意分野が、そのまま承継の"処方"になりやすい。これが、私が最も見落とされていると考えるリスクです。

四者の強みと限界を並べると何が見えるか

相談先強み限界・寄りやすい方向報酬の源泉
銀行融資、企業価値評価、地域の買い手情報資金需要が生じるM&Aに出口が寄りやすい融資利息、M&A仲介・紹介手数料
M&A仲介買い手候補のネットワーク、交渉の推進力成約が前提。売却以外の選択肢は原則扱わない成功報酬(最低手数料の設定あり)
税理士株価評価、相続・贈与税、事業承継税制節税方向に寄りやすく、M&Aの実行は範囲外顧問料、申告・対策報酬
コンサル選択肢の比較と全体設計実行まで担えるかは会社ごとに差が大きいアドバイザリー報酬(成功報酬型もあり)

特に注意すべきは仲介の報酬構造です。中小企業庁は、民間仲介事業者は売り手とは一回限りの取引である一方、買い手とは反復取引になるため、買い手の意向を強く反映する利益相反の問題があると指摘しました。この問題意識を受けて2024年8月に改訂された中小M&Aガイドライン第3版では、最低手数料を含む算定基準の丁寧な説明と、仲介者に禁止される利益相反行為の具体化が盛り込まれています。

登録M&A支援機関は2025年10月時点で3,046件に達しましたが、2025年1月には資金力に疑義のある買い手を紹介した業者に対し、制度創設以来初めての登録取消しも行われています。登録の有無だけで質は判別できません。

税理士の限界も具体的です。節税を目的に株価を引き下げてから第三者への売却に転じると、譲渡価格の根拠が弱くなり、対策が逆効果になることがあります。したがって、出口が確定していない段階で、節税を目的とした株価対策を先行させるべきではありません。順序は「出口の決定→税務設計→実行」です。

銀行、仲介、税理士、コンサル。いま御社が話している相手が、上の表のどこに位置するのか、そしてその報酬構造が助言にどう影響しているのかを、30分の無料相談で一緒に整理できます。

「一か所に任せれば楽」という考え方は本当に間違いか

実務家の一部には、窓口を分けると経営者の負担が増え、意思決定が遅れるという見解があります。承継準備には後継者の育成期間を含め5〜10年程度を要するとされる中で、社長の時間は最も希少な資源であり、この指摘には合理性があります。

それでも私は、少なくとも「出口を決める相談」と「決まった出口を実行する相手」は分けるべきだと考えます。理由は単純で、実行者は自分の得意な出口に導く動機を構造的に持つからです。窓口を分けることは遅れの原因ではなく、後戻りを防ぐ保険です。一か所に任せるなら、最初に報酬の源泉と、自社が扱えない選択肢を必ず尋ねてください。

私たちNEX Consulting/NEX税理士法人も、この限界の例外ではありません。会計・税務と全体設計は担えますが、買い手ネットワークの広さでは大手仲介に及ばず、融資も実行できません。だからこそ私たちは、出口の比較と設計を先に行い、実行段階では金融機関や仲介と役割を分けて組む形を基本にしています。

まとめ

  • 相談先は「詳しさ」ではなく「報酬の源泉」で選ぶ。源泉が助言の方向を決めます。
  • 相談先の59.1%が顧問税理士、42.3%が銀行に偏る一方、後継者候補の41.0%は非同族。窓口と選択肢のズレを自覚することが第一歩です。
  • 出口が決まる前に節税目的の株価対策を先行させない。順序は出口→税務→実行。
  • 最初の面談で「御社の報酬はどこから来ますか」「扱えない選択肢は何ですか」の二つを尋ねる。

※本文中の数値・制度の出典:
(※中小企業庁 2017年版中小企業白書/2017年)
(※帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査/2025年)
(※中小企業庁 中小M&Aガイドライン(第3版)/2024年)
(※中小企業庁 中小M&Aガイドライン(第3版)改訂の方向性について/2024年)
(※中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録FA及び仲介業者の公表(令和7年度公募9月分)/2025年)
(※M&A支援機関登録事務局 公表資料/2025年)
(※中小企業庁 事業承継ガイドライン(第3版)/2022年)

本稿は、事業承継の相談先の選び方に関する一般的な解説であり、個別の案件における判断・結果を保証するものではありません。各機関の報酬体系や支援範囲は個別に異なります。実際の案件では、個別の事情を踏まえ、専門家への確認を行ってください。

関連資料:親族承継・社員承継・M&Aの3つの出口を比較したガイドを無料公開しています。相談先を選ぶ前に「自社の出口」を仮決めする材料としてご活用ください。


参考・出典

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