非上場株式の評価は“これまでより厳しく”なる? | 大阪・名古屋・東京の事業承継専門家|株式会社NEX Consulting(ネックスコンサルティング)

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税制解説

非上場株式の評価は“これまでより厳しく”なる?

事業承継・自社株対策

非上場株式の評価は“これまでより厳しく”なる?
──国税庁・有識者会議が描く見直しの方向性

最近、事業承継のご相談で「自社株の評価、これまでより厳しくなりそうですね」という声をよく伺います。実際、国税庁の有識者会議での議論は、その“肌感覚”を裏づける方向に進んでいます。今どこまで来ているのか、なぜ厳しく感じられるのか、そしてオーナー経営者は今のうちに何を考えておくべきかを整理します。

NEX税理士法人/株式会社NEX Consulting | 2026年7月


目次

そもそも、なぜ今「評価の見直し」なのか

きっかけは、会計検査院からの指摘でした。取引相場のない株式(=非上場株式)の評価には複数の方法がありますが、同じ会社でも用いる方法によって評価額に大きな差が生じ、その開きが最大でおよそ4倍にのぼるケースもあると問題視されたのです。加えて、類似業種比準方式の計算式が「配当」を重視する一方で、実際には無配当の中小企業が多く、算式が想定どおりに働いていないのではないか、といった構造的な指摘もありました。

これを受けて国税庁は、令和8年(2026年)4月から有識者会議を立ち上げ、7月3日までに計4回の議論を重ねてきました。第1〜3回は問題提起と、会社法・M&A実務・会計学の専門家からの理論的な検証が中心でしたが、第4回で当局が具体的な検討課題を示し、議論は「どう直すか」の段階に入りました。

第4回で見えてきた「見直しの方向性」

第4回で国税庁が委員に意見を求めた論点は、そのまま今後の見直しの方向性を映しています。要点は次の6つです。

当局が示した6つの検討課題

  1. 学術的な企業価値評価やM&Aの評価手法も参考に、「抜本的な見直し」も視野に検討する
  2. 複数ある評価方式を「一本化」する方向で検討する
  3. 会社法の訴訟やM&A実務でも使われなくなってきた類似業種比準方式の今後の在り方を再考する
  4. 純資産価額方式を“基本の方式”としては維持せず、「特定の評価会社」向けの方式として位置づけ直す
  5. 配当還元方式は「特別の例外的な措置」と整理し、対象となる株主の範囲や従業員持株会の扱いも見直す
  6. 少なくとも資産管理会社は純資産価額方式で評価する

どこが“厳しく”感じられるのか

ポイントは、これまで評価を引き下げる「余地」だった部分に、順番に手が入りそうだということです。少しかみ砕いてみます。

いまの評価制度は、同じ会社を測るのに何本もの“ものさし”を使い分けているような状態です。ものさしごとに出てくる数字が違うため、その「すき間」を突いて評価額を圧縮する手法が数多く生まれてきました。当局が目指す「一本化」は、このものさしを1本に束ねる試みです。すき間がなくなれば、これまで効いていた打ち手は効きにくくなります。

① 評価を圧縮する“スキーム”に、正面から網をかける

第4回では、会社規模の人為的な操作、グループ会社間の循環的な貸付、配当還元方式を使える株主をあえて作り出す手法、リースの活用、資産管理会社の利用など、評価額を大きく圧縮する事例が具体的に示されました。注目すべきは、これらを個別の「総則6項」否認で叩くのではなく、評価通達そのものを書き換えて封じるという発想です。つまり「あとから否認されるかも」という不確実さを減らす代わりに、ルールの側であらかじめ抜け道をふさぐ──納税者にとっては予測しやすくなる一方で、使える手法は確実に狭まります。

② 純資産価額が“下限(フロア)”として意識される

委員からは、純資産価額はいわば評価の「下限値」ではないか、という見方が示されました。純資産価額方式を特定の会社向けに位置づけ直す方向とあわせて考えると、「ここより下には下がりにくい床」が意識されやすくなります。低い評価額を前提にした設計は、これまでどおりとはいかない可能性があります。

③ 資産管理会社・従業員持株会は前提が変わりうる

資産管理会社は純資産価額方式で評価する、という方向が明確に示されました。また配当還元方式を「例外的な措置」と整理し、従業員持株会の扱いまで検討対象に含めています。資産管理会社を挟む設計や、持株会を活用した評価の引き下げは、前提そのものを点検し直す必要が出てきそうです。

ただし、「決定事項」ではありません

ここは冷静に

今回の内容は、あくまで有識者会議での議論の方向性であって、制度改正が決まったわけではありません。実務への影響が見え始める最初の分岐点は、2026年12月の与党税制改正大綱です。その後、通達改正案の公表・意見募集を経て、施行はさらに先(早くても令和10年=2028年ごろ)になる見込みです。過度に身構える必要はありませんが、方向感は固まりつつある、という受け止めが妥当でしょう。

なお、見直しは「評価を適正化(≒厳しめに)する」一方で、事業承継税制などの優遇と一体で議論されている点も見落とせません。評価は通常の価額で行い、負担は税制側で手当てする──ドイツなどはこの考え方に近く、日本でも「評価と税制の一体改革」として語られています。評価だけを切り取れば厳しく映りますが、出口の設計次第で全体像は変わります。

いま、オーナー経営者ができること

制度が固まる前の「今」は、選択肢がもっとも広い時期でもあります。慌てる必要はありませんが、次の点は早めに手をつけておく価値があります。

  • 現時点の自社株評価を試算しておく。 “今のものさし”での水準を把握しておけば、見直し後との比較ができ、打ち手の判断が速くなります。
  • 資産管理会社・従業員持株会を使った設計を点検する。 前提が変わりうる領域なので、依存度が高いスキームほど早めの確認を。
  • 贈与・組織再編・事業承継税制(特例措置)の活用余地を、施行“前”の期間で検討する。 特例措置には期限があり、早い段階での計画が効いてきます。
  • 2026年12月の税制改正大綱を注視する。 ここで方向が具体化します。速報段階で影響を見立てておくと安心です。

「厳しくなりそう」という感覚は、決して気のせいではありません。もっとも、厳しくなるのは“抜け道”の部分であって、正攻法で計画的に進める承継の価値はむしろ高まります。制度の変わり目こそ、早めに現状を把握しておくことが最良の備えになります。

NEX税理士法人/株式会社NEX Consulting

事業承継・M&A・自社株評価に関するご相談を承っています。今回の見直しがご自身の会社にどう影響しうるか、現状の試算からご一緒に整理します。

※本コラムは、国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」(第1回〜第4回、2026年4月〜7月)で公表された資料に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものです。記載内容は執筆時点の議論段階のものであり、今後の税制改正・通達改正により変わる可能性があります。個別の判断は、事実関係を確認のうえ専門家にご相談ください。本コラムは特定の取引・対策を推奨するものではありません。

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